
高校一年生の次男が、俺にこんなことを言ってきた。
「野球部、辞めようと思ってる。」
うん。
最近部活を休みがちになっているのは気付いていたし、妻からそれとなく話も聞いていた。
部活で数人の友達とぶつかってから、一年生の雰囲気が悪くなったとか、そんなことらしい。
俺の学生時代を思い返してみても、部活は楽しいだけじゃなかった。
練習はキツイし、先輩はうっとおしいし、顧問に理不尽な怒られ方もした。
正直、何度も辞めたいと思った。
でも、俺の親父はそんな俺にこう言ったんだ。
「辛い時こそ成長のチャンスだ。」
は??
今思えば、なんとも昭和的なセリフだよね。
部活って気合と根性だけでなんとかなるもんじゃない。
それが何?成長のチャンス?はぁ?何言ってんの?
辞めたいと思ってから相談するまで、俺がどれだけ悩み苦しんだか全く理解していない。
だから、俺は息子からじっくり話を聞くことにした。
「何があった?」
息子はぽつりぽつりと話し始めた。
どうやら一年生数人と練習の取り組み方でぶつかってから、一年生全体の雰囲気が悪くなったらしい。
「あいつら全然やる気ない」とか、「下手なやつの悪口ばっかり言っててむかつく」とか、まあ高校生ならではの悩みだ。
「そっか。色々辛かったな。」俺はそう言った。
「そんなの我慢しろよ」と言いたい気持ちも無くはない。けれど、それを言っちゃ俺の親父と一緒だ。
ここはむしろ、まずは親として息子の思いを受け止めることが大事だ。
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話を聞き終えた後、俺は次男に言った。
「辞めるのもひとつの選択としてあると思う。でも、辞める前に少しだけ考えたほうがいい。今辞めて自分が後悔しないか? 他に解決できる方法はないか?」
息子は少しだまってから、「俺、野球に対しての熱意が無くなったんだ」とつぶやいた。
小学一年生から野球を始めた次男は、背が小さくて運動が苦手だった。
運動が得意だった、上級生の兄と比較されて辛い思いをした。
学童野球では、同級生が次々とAチームに上がる中、Bチームに取り残されて悔しい思いもした。
だが、それでも次男は野球を続け、中学でついに開花した。
完全なスラッガー体形に進化した次男は、90mのレフトスタンドに何度も打球をぶち込む活躍で、公立中学の全国大会出場に貢献。
正直、長男より野球が向いているんじゃないかと思っていた。
高校での活躍が楽しみでもあった。
でも、最終的には次男がどうしたいかが一番大切だ。
「お前の人生だからさ、自分でしっかり決めることが大切だと思う。辞めるとしても俺はお前を尊重するよ。」と伝えた。
親としてアドバイスはするけど、決定権は次男にある。
それが彼の自立に繋がると思った。
次男は「色々…休部とかも考えて、先生に相談してみる」と言った。
正直ホッとしたけど、大事なのは彼が自分で考えて出した答えだということ。
俺が次男から学んだのは、親は常に”答え”を与える存在ではないってことだ。
むしろ、一緒に考えて、そっと背中を押してあげる存在であればいいんじゃないか。
人生の困難はこれからも山ほどあるだろうけど、家族はそのたびに支え合う場所でありたい。
それにしても、子育てって奥が深いよね。
今日もまた息子から色々と教わった気がしたよ。
それじゃ、またね。
あっちけいでした!