子供たちがまだ小さかったころ、近所でアメリカザリガニを捕まえて飼ったことがある。
ザリガニを捕まえた方法は、昔ながらのやり方。
割りばしに紐をつけ、イカの燻製を餌にして釣り上げる。
捕まえた中でも、一番デカくて爪が大きい奴を飼うことにしたんだよ。
いわゆる「マッカチン」ってやつだ。
ザリガニを飼っていたのは30cmくらいの小さい水槽で、サイズはまぁこれくらいで十分だろうと甘く見ていたんだよね。
でも、ザリガニってやつは思った以上にプリズンブレイクで、ある日ふと見たら、姿が消えてた。
力技で蓋を外して、脱走してたんだ。
どこ探しても見つからなくて、きっとどこかで乾いて、お亡くなりになってるんだろうって、正直諦めてたんだよね。
数週間後。
ザリガニの存在なんて完全に忘れかけたころ、事件は起きたんだ。
夜中、家族みんなが寝静まった丑三つ時。いや丑三つ時かは知らん。
なんとなく寝返りを打ったとき、枕元で何かが動いてる感覚があってさ。
普段なら気にしないんだけど、そのときはなんか妙に気になって、目を開けてみた。
そしたら、いたんだよ。
あのザリガニが。
しかも、爪を高く上げて、こっちをガン見しながら威嚇している。
正直、自分の目を疑ったね。
まさか、あの逃げ出したザリガニが数週間も経ってから、俺の枕元で再登場するなんて思ってもみなかった。
しかも、やたら元気で、「どやぁ!俺様は生きとったで!」ってドヤ顔してる感じがすごかった。
深夜の静けさの中で、一人と一匹の静かな戦いが始まったんだ。
まぁ戦いっていうか、俺が一方的にビビってただけなんだけど。
ザリガニは俺の枕で、まるで「寝ちゃっていいのか?挟むぞ?」とでも言いたげに、シャーって爪を大きく広げてる。
いや、ザリガニはシャーとは鳴かないんだけれども。
で、そのまま放っとくわけにもいかないから、そーっと起き上がって、ザリガニを手で捕まえようとしたんだけど、こいつがまた素早い。
逃げる逃げる。
俺も必死で、なんとか捕まえてまた水槽に戻したよ。
夜中に水槽のセッティングとか、マジで勘弁してほしかった。
あのザリガニ、飯も満足に食べていないはずなのに、どっからそんな元気出してきたのか謎だったけど、とにかく無事に捕獲成功。
次の日、家族にその話をしたら、みんな大爆笑。
「パパ、ザリガニにビビってたの?YOU ヘタレちゃうんか?」って。
いや、笑い事じゃねえ。マジで。
深夜に爪を立てて威嚇してくるザリガニの恐怖を、誰か理解してほしかったんだけど、まぁそうなるわな。
結局、そのザリガニはしばらくの間、もう一度水槽で暮らすことになった。
再脱走を防ぐために水槽のフタをガッチリ閉め、枕元での対面は避けるようにしてね。
でも、なんだかんだでそのザリガニ、子供たちにとってはいい思い出になったみたい。
深夜のザリガニ騒動、あれはなかなか忘れられない体験だったね。
ザリガニの生命力の強さに驚かされたし、何よりもあいつの「I’m here!」っていう存在感には、ちょっと感心させられた。
威圧感。威圧感。
そんなお話でした。
じゃ、またね。